【愛されなかった人形(完結編)】


寂しいのは嫌い。暗いのは嫌。でも、誰からも愛されなくてもいい
そう、私たちは呪縛(アリスゲーム)から逃れられない薔薇乙女(ローゼンメイデン)
いくら愛しても何時か想い人から離れる運命(さだめ)
悲しみの涙を流し続けるのならば……ずっと一人のままがいいわ……


 月の光が夜空に黒い羽を浮かび上がらせる。漆黒のドレスが闇に隠れてはまた現れて、スカートの裾が
ひらひらと風になびく。
水銀燈はじっとジュンの家の方角をじっと見ていた。
「真紅……人間を信じているのね。そう、貴女らしい……」
 切れ長で釣り上がった目に長いまつ毛。端正な顔立ちが少し冷たい印象を持たせる。神妙な面持ちで独り言を
言っていたと思うと、急にその顔を崩して笑い出した。
「ぷっ、あはは。馬鹿、お間抜けねぇ。おっかしぃ〜。貴方はほんっとうにアリスに相応しくないお人好しぃ」
 そう言い終わると、またその姿を闇に消した。
「そうよ。人間なんて信じないわ。もう二度と」消え際に小さな声でぽつり言い残して。


「はぁ、はぁ……真紅」
「なぁに……ジュン」
「とっても気持ちよかった。でも、痛くなかった」
「大丈夫…………私も……気持ちよかったわ……って、何を言わせるのよ」
 かぁっと真紅の顔がまた赤くなる。つかつかと歩み寄ってさっと手を上げた。
「うわっ!」
 ジュンがまた真紅に平手で殴られるかと目を瞑る。

【ちゅっ……】

 柔らかい感触が唇に触れた。
「私を辱めた罰だわ。もう一回して頂戴」
「いっ!?でも、このラブドールの想いはもう……」
「嫌?」
「……嫌じゃない」
「んっ……んんっ」


「全く、いい加減にしやがれです。あの子に力を与えた張本人が水銀燈だって折角掴んでやったのにですよー」
ジュンの部屋の扉が少しだけ開いている。廊下から緑色の左目がじっとその様子を見ていた。
「一回やれば充分ですのに……もう、離れるですぅ。これじゃ中に入って行けないですよぉ……」
 そう言いつつも、その視線は先ほどから、隙間から見える真紅とジュンの行為をじっと見入っている。
「ジュンと真紅は仲良くしすぎです……ジュンも……ちょっと位は……翠星石と仲良くしても許してやるですのに……」

【……くちゅ】

 キャミソールのフリルが見える程にドレスの裾をたくし上げ、その中に手を入れた翠星石は女性の陰部に当たる
部分を上下に刺激している。
「こ、これは、後学のためどんな感じだか試しているだけです。決して、ジュンと真紅を見て興奮したんじゃない……
です……」
 誰も聞いていないのに翠星石は一人でいい訳をする。ゆっくりとスカートの中を移動していた、手が次第に動きが
激しくなっていく。今真紅がジュンに愛撫されている部分と全く同じ部分を刺激してその快感に酔いしれていた。

【くちゅっ、くちゅ、……ぴちゃっ、くちゅっっ】

 ローゼンの作った人形は意思を持っているだけではなく、涙を流す事も出来る。女性としての部分が濡れる
事もできた。その刺激を今翠星石は頭の中で堪能していた。人間に最も近い人形、ローゼンメイデン(薔薇乙女)とは
そういう部分も実にリアルに作られていた。
「ちび人間に……やられるです。汚されてしまうですぅ……んんっ、気持ちいいです……んっ、んんんっ……
ジュンのあそこを本当は翠星石が気持ちよくしてあげたいですぅう……」
 自分が人見知りをし、普段ジュンを馬鹿にしてジュンに疎まれているのも何となく分かる。でも、それは翠星石の
本当の気持ちをジュンに……そして真紅に隠す為の精一杯のポーズであった。
「ジュン……本当は優しいジュン。翠星石を苛めて欲しいですぅ……あぁっんん、んんっ。そこを、もっと
ぐちゃぐちゃに汚してですぅぅ……もっと、真紅よりもっと……深く……あっ、あっ、だめぇ、だめぇです……
でも、止めないで……ですぅ」

【ぴちゅっ、ぴちゃっ、ぴちゅっ、くちゃっ、くちゅっっ、くちゅ】

 オッドアイの目がとろんと半目になり、やたらと唇の渇きを潤すように舌で周りを舐める。その唇が時折尖ったり
モグモグ動かすような動きをする。妄想の中で翠星石は自らが少女のアリスとなり、ジュンと深いキスをし舌を
絡めあい、ジュンに犯されている。目の前で真紅がジュンとセックスをしている状況を自分と重ねて、行為に没頭していた。
「ジュぅぅぅン……いつも馬鹿にしている翠星石を犯してくださいですぅ……ジュンのぉぉを翠星石にかけて
下さいですぅぅぅぅ」
 清楚な装いがすっかり乱れ、左手はドレスの上から僅かに膨らみのある胸を激しく揉んでいる。柔らかく作られた
胸の膨らみが形を変え、その度に翠星石は歓喜の声を漏らしていた。
「ああぁあん……好きですぅ……ジュうぅぅン……真紅を犯すなら……私のここも……ああっ、あああぁあっ、
そ、そうっ、ですぅもっと、もっと、気持ちぃぃぃですよぉぉぉ……」
 翠星石の目に真紅の中でイキそうになっているジュンが映る。それと合わせるかのように翠星石の動きが
一層早くなっていく。

【くちゅ、くっちゅ、ぬちゃ、くちゅくちゅくちゅくちゅっっ】

「はぁはぁっ、はぁはぁはぁああ、だめですぅぅぅぅうう、ジュン、もう、翠星石、あぁああぁぁぁっ、
いくですぅぅぅ、もう、いくですぅぅぅぅ、いっちゃうですぅぅぅぅぅ、我慢できないですぅぅぅぅ」
 口の中からだらしなく涎を垂れ、一心不乱に陰部と胸の先を擦ったりつねったり引っ張ったりして刺激を加えている。
「いっぱい翠星石に出してぇぇ……あっ、ああぁっ、だめですう、あぁあぁあ、あっですっ!、ぁぁぁああああああああああ!!!」

 ぐったりとその場にへたり込む翠星石。その顔は満足感で恍惚の表情をしている。
「だぁれだ?」
 突然、翠星石の目が塞がれ口に翠星石が脱ぎ散らかしたリボンが突っ込まれる。
「お父様のアリスになる事も忘れて、あんな人間と妄想セックスぅ?お仕置きが必要ねぇ。翠星石」
「……!!」

【ガッ!】

「ゆっくりと苛めてあげる。あのお馬鹿真紅も結局人間とセックスしたの?プライドの高いお嬢様真紅だから、
できないと思っていたのにぃ」
 そう言うと、翠星石を抱え舞い上げる。その目は軽蔑の眼差しを真紅に向けていた。


「しんくぅ〜、あの子に力を与えたのぉ、水銀燈だったのぉ」
「それは何度も聞いたわ。それより、翠星石は何処に行ったの?」
「先に帰っているはずなんだけどぉ」
 そこには元の人形(ドール)の姿に戻っていた真紅がいた。ベッドには先ほどまで真紅と同化してた
ラブドールが寝かされている。ラブドールの想いが遂げられ、真紅はラブドールの体から意識を分離する事に成功していた。

「おかしいわね。翠星石は一度も姿を見せてないわよ。これは、事件の臭いがするわね」
 そう言って、真紅はくんくん探偵のマネポーズをする。5分程前、雛苺はジュンの家に帰ってきた。自分の精霊の
ベリベリーが逃げ出しそれを追いかけるので雛苺は遅れたと言う。ずっと前に翠星石はここに向かったと雛苺は言っていた。
「……ちょっと、それじゃ真紅とその……僕が……見られる可能性もあったって事じゃないか!?」
 ジュンが真紅の耳元で囁く。それを聞いた真紅が顔を真っ赤に紅潮させる。
「今回の事件と翠星石の失踪の事、推理がまとまりそうよ」
「なぁ、推理も何もちょっと考えれば答えは一つだろ」
「ジュン、紅茶を入れてきて頂戴。直ぐに」
 テレを隠すようにドアの方向をびっ!と指差す。やれやれという表情でジュンがドアから出て行こうとした瞬間、
ジュンが大きな声をドアの外で上げる。
「し、し、真紅!ここに翠星石の服と黒い羽がぁ!?」
 それを聞いた真紅は静かに言う。
「水銀燈……今度という今度はちょっとやりすぎね。許さないわ」
「しんくぅ、水銀燈をやっつけてこらしめるのぉ」
 雛苺は既にファイティングポーズを取っていた。
「貴方はお留守番よ。雛苺」
「なんで〜〜!!」
「だって、雛苺がいたら足手まといなんですもの」
「ひどい〜〜!!」
「じゃあ、一緒に行くかどうかは多数決で決めましょ」
「いいよぉ。雛苺、真紅と一緒に行くのに一票〜!」
「じゃ、雛苺がお留守番に私は一票」
「これじゃ、同じだよぉ」
「……はい」
 雛苺が振り返ったそこには、手を上げたジュンの姿があった。


 nフィールド。そこは鏡の中へと通じる異空間である。ローゼンメイデンにはその空間を超える力があった。
「水銀燈がワザとこの羽を残したのだとしたら、私たちを誘っているのよ」
「何で?こんな面倒な事をしなくたって……」
「水銀燈は楽しんでいるの。そう、まるでゲームをするように。」
「なんでさ、なんで同じローゼンメイデンの人形なのに」
「彼女は愛を信じていない。そして、誰も信用しない。そういう子よ。だから私たちが許せなかった」
「どういう事?」
「まだ、わからないの?そういう事よ」
 時間が勿体無いという素振りで、手に黒い羽を持った真紅は鏡の中に入っていく。ジュンは何のことだか理解できずに
その後について行った。


「結局、あんな捨てられていたジャンクを使って小細工するのが間違いよねぇ。最初からこうすれば良かった。
でも、真紅がジャンクに取り込まれたときのあの顔。ぞくぞくしたわぁ」
「心の汚い水銀燈が真紅に勝てるわけなんてないですぅ!ぶちのめされるのがオチですよ〜だ」
「五月蝿いわねぇ。真紅を呼び出す餌にしてやろうかと思ったけど、今すぐジャンクにしちゃおうかしら」
「油断さえしてなければ、お前になんかやられるはずないですのに!」

【びしぃっ!】
 両手を蔓に拘束され、下着のまま吊り下げられている翠星石に水銀燈の平手が飛んだ。

「お父様を忘れて人間を妄想しながらオナニーしている貴方なんかに負けるわけないわよ」
「……」
「翠星石……。貴方の体、お望みどおりめちゃくちゃにしてあげましょうか」
「ひっ、やっ、やめろですぅ……」
「崇高なローゼンメイデン(薔薇乙女)の志を忘れた翠星石の汚れた体なんか、どうなってもお父様も悲しまないわ」

【ぷつっ】

「いっ!!!!」
 水銀燈の手が翠星石の陰部に伸びる。無造作にその部分をこねくり回す。
「いやですぅ、やめるですぅ。お願いですぅ」
「あら、さっきまでの強気はどこぉ?でも、やめてあげなぁい」

【くちゃ、くちゅ】

「やっ、あぁあぁああ!!」
「あらぁ、こんな事でも濡れるのねぇ。ひょっとして、翠星石マゾ?あは、調教し甲斐がありそう〜」
「あっ、んっ、あぁっ、誰が……ですぅ、んんっ」

【くちゅっ、くちゅっ、ぴちゅ】
 僅かに湿り気を帯びているのがその音でもわかる。そして翠星石の声が苦痛から少しずつこもった声に変わっていく。
だが、水銀燈の顔はその声を聞いて、さらに険しくなっていく。
「あぁ、だめですぅ、あっ、ああぁん……もっとぉですぅ」
「本当に最低。アリスの資格なんて絶対ない」
 水銀燈の目が狂気のそれに変わった。
「私達を愛していいのはお父様だけ。それを……人間なんかに。愛なんていらない。翠星石なんか壊れちゃえばいいのよ」
「な……なにをするつもりです!?」
「体をバラバラにしてジャンクにしてあげる」
「ダメ、止めるです。いやぁああ!!」

【止めなさい!水銀燈!】

 暗い空間が裂け真紅とジュンが落ちてくる。
「今度という今度はちょっとやりすぎたようね。罰が必要だわ」
「あら、真紅。もうちょっと遅かったら、翠星石がジャンクになったのに。惜しかったわねぇ」
 くすくすと小悪魔のように笑う。その目はじっと真紅とジュンを見据えていた。
「人間とセックスするなんて、アリスの資格なんてもう貴方にはないのよ。大人しくローザミスティカを渡しなさいよぉ」
「あれは、私であって私じゃないわ。だから無効よ」
「無効って、それ、どういう事だよ真紅」
「そういう事よ」
 がっくりと肩を落とすジュン。それをまるで無視するかのように真紅は続ける。
「今ならまだ許してあげる。大人しく翠星石をお渡しなさい」
「許さなくてもいいわよぉ。だって、ここで真紅はジャンクになるんだもの」
 そういうと、真紅の周りに黒い羽が襲い掛かる。びっしりと羽が真紅とジュンの周りに壁を作る。
「真紅は本当に馬鹿ねぇ。ここは私が貴方を待ち構えていたnのフィールドよ。罠があるのが当たり前じゃない〜。
雛苺の気配もないし、これで私の勝ちぃ〜」
 勝ち誇った水銀燈が満面の笑みを浮かべて笑う。
「あはははは。真紅、あのジャンクの人形に取り込まれて、頭が悪くなったんじゃないのぉ」
「馬鹿は貴方よ」
「何強がり言ってるのぉ。もう、ゲームはお終ぃ」
「もう一人、忘れているわ」
「何言って……!?」
 水銀燈の体を後ろから冷たい少女の手が包み込む。それと同時に水銀燈にある意識が入り込んできた。

【お願い……愛して】

「ひっ、やめっ、止めなさい。貴方はもう、真紅で想いを遂げたはず」
「この子の意識は確かに想いを遂げたわ。でも、水銀燈。貴方が変な力を貸したおかげでその潜在意識だけこの
フィールドには留まっているのよ」
「いや、だめっ、嫌よ」
「その子に取り込まれたら、誰が貴方を愛してくれるのかしら。愛されないのならこのフィールドを永遠に
彷徨うことになるわ」
「た、助けて。真紅……この体を失うのは嫌、嫌なの。イヤァアア!!!」
 慌てて水銀燈は逃げようとする。だが、しっかりその体を掴んだ手を少女の人形が離す事はなかった。暗い空間に
水銀燈と少女の人形が吸い込まれ、そして消えていった。
「真紅、今何処に消えていったんだ?」
「水銀燈は別のフィールドに逃げ込んだのね。上手く逃げられなかったみたいだけど」
「大丈夫なのか?」
「さぁ?ダメじゃないかしら」
 淡々と応える真紅を見て、ジュンは心底真紅を敵には回したくないと思った。

 縛られ、捕らえられていた翠星石は複雑な表情をしている。
「遅いですぅ。全くこれだからちび人間は」
 悪態を突くもいつもの元気がない。
「大丈夫だったか。翠星石」
 ジュンが優しく声を掛けると、顔を赤くして下を俯く。
「一応……お礼を言っておくですぅ。それと……あんまり真紅と仲良くしないで欲しいですぅ」
 最後の方は消え入るような小さな声で言う。翠星石にはそれが精一杯だった。自分の秘めた想いをジュンに
伝える勇気はまだなかったのである。


 部屋に戻ったジュンは上機嫌だった。パソコンで怪しげな通販を早速チェックし始めている。
「あら、随分と上機嫌ね。ジュン」
「まぁ、色々あったけど元通りになったんだ。呪いの人形3体を除いて。まぁ、1体減っただけでもありがたいし。
それに……」
「それに?」
「真紅もあの事は気にしてないようで良かったよ」
「あら、責任は取ってもらうわよ」
「な、なんで?無効だって言っただろ」
「アリスゲームを終えて私がアリスになったら、ちゃんと責任を取るのが下僕の努めよ」
「えぇー?冗談だろ?」
「冗談よ」
「ほ、本当?」
「嘘にして欲しいの?」
「え……?いや、その……僕は……」
 複雑な表情をしているジュンを見て、真紅はくすりと笑う。ジュンは何故、それを強く否定しなかったのか自分自身で
良く分からなかった。それを理解できるほどジュンは大人になりきれていなかったのである。

おしまい


 ローゼンメイデンSS【愛されなかった人形】の続きです。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。

   真紅がちょっと原作より大人になりすぎちゃったSSです。まぁ、大人の小説ですのでその辺はご勘弁を。
翠星石のシーンしか18禁の部分はありませんが、これで一応この話は完結です。原作を崩さないSSを
目指しているので、この辺が限界かと。w
個人的には真紅と同じ位翠星石も好きだったりします。でも、ジュンとはこれ以上の進展は難しいでしょうね〜。

 正直、ローゼンメイデンの大人の小説SSって本当に難しい。何しろヒロインは人形ですから。
お姉さんののりか同級生の巴という線もあるんですけど、それじゃこのSSである意味がないし……。
一応ローゼンメイデンのSSは暫らくお休みします。他の作品でお会いできれば幸いです。

凛花ネーション


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